倉庫の片隅に積み上がった売れ残り。値下げしても動かない型落ち品。決算書を眺めながら、「これ、まとめて経費にできれば税金が減るのに」と考えたことはありませんか。
「プロせどらー&在庫処分の羅針盤」へようこそ。在庫ソリューション・コンサルタントの黒田 龍介です。事業再生ファンド時代、私は数多くの企業で在庫の現金化に立ち会ってきました。そこで痛感したのは、「在庫の値下がり=即経費」という思い込みが、税務調査で痛い目を見る最大の原因になっているという事実です。
在庫を売却した、評価額を下げた、あるいは廃棄した。これらはすべて似て非なる処理であり、それぞれ求められる証拠も、損金算入の可否も全く違います。本記事では、法人と個人事業主それぞれの目線で、在庫処分にまつわる税務処理を体系的に整理します。仕訳例、税務調査で否認されないためのチェックポイント、インボイス制度との関係まで、実務で迷わないレベルまで踏み込んで解説しますので、決算前に一度目を通しておいてください。
なお、税務処理の最終判断は必ず顧問税理士の確認を受けてください。本記事は実務の判断材料を提供するものであり、個別具体的な事案への適用を保証するものではありません。
目次
在庫処分の税務処理は3種類ある(売却損・評価損・廃棄損)
まず押さえておきたいのは、在庫処分にまつわる税務処理が大きく3種類に分かれるという点です。同じ「不要在庫を整理した」という行為でも、どの処理にあたるかで税務上の扱いが180度変わります。
「値下がり=経費」とはならない大原則
法人税法第33条は、原則として資産の評価損を損金不算入と定めています。つまり、ただ「市場価格が下がったから帳簿価額を下げる」という処理は、税務上は認められない。これが大前提です。
評価損が損金として認められるのは、災害による損傷、著しい陳腐化、破損や品質変化など、限られたケースに限ります。詳しくは中小企業庁が運営するJ-Net21の資産の評価損が損金として認められる場合が網羅的に整理しているので、判断に迷ったら確認してください。
裏を返せば、「経費にしたい」というだけで帳簿の数字を動かしても、税務調査で簡単に否認されます。経費化したいなら、別のルートを通す必要があるわけです。
売却損・評価損・廃棄損の違いを整理する
3つの処理の違いを整理すると、次のとおりです。
| 処理の種類 | 内容 | 経費化のしやすさ | 必須となる証拠 |
|---|---|---|---|
| 売却損 | 第三者へ実際に売却して発生する損失 | 高い(通常取引なら問題なし) | 売買契約書・請求書・入金記録 |
| 評価損 | 売却・廃棄せず帳簿価額を切り下げる処理 | 限定的(要件が厳格) | 客観的な価値減少の事実、損金経理 |
| 廃棄損 | 物理的に廃棄して価値をゼロにする処理 | 中程度(証拠次第) | 廃棄証明書・写真・社内稟議書 |
売却損は、買取業者やセール販売を通じて実際にモノを動かすため、客観性が高く、税務上も最も認められやすい処理です。一方、評価損は「モノは動かさず帳簿だけ動かす」ため、要件が厳格化されています。廃棄損は、廃棄の事実が証明できれば認められますが、証拠が薄いと「カラ廃棄」と疑われ否認されるリスクが高い処理です。
法人と個人事業主では何が違うのか
法人と個人事業主では、適用される税法と届出ルールが異なります。
- 法人は法人税法、個人事業主は所得税法が適用される
- 低価法を選択するための届出時期が両者で異なる
- 個人事業主の場合、青色申告者でなければ低価法は選択できない
- 法人間の低額譲渡には寄附金課税のリスクがある
特に「低額譲渡」については、法人が在庫を関係会社や役員個人に時価より極端に安く売却した場合、差額が寄附金として認定されるリスクがあります。買取業者など独立第三者との取引であれば、この問題はほとんど起こりません。
「売却損」を経費計上するときの実務ポイント
3つの処理の中で、最もシンプルで税務リスクの低いのが売却損です。ただし、いくつかの落とし穴があります。
通常の販売による売却損は自然に経費化される
そもそも売却損という独立した勘定科目を立てる必要はありません。在庫を売却すると、貸方に「売上」、借方に「現金預金」が立ちます。そして売上原価として帳簿価額が費用計上されるため、原価より安く売れば、自動的に粗利益(売上総利益)がマイナスになる。これがいわゆる売却損の正体です。
仕訳のイメージは次のとおりです。仕入原価200,000円の在庫を、買取業者に50,000円で売却したケースを想定します。
(売却時)
現金預金 50,000 / 売上 50,000
(売上原価への振替)
仕入(売上原価) 200,000 / 商品(棚卸資産) 200,000
結果として、売上50,000円に対し売上原価200,000円が立ち、150,000円の粗利マイナスがそのまま課税所得を圧縮します。評価損のような厳しい要件は不要で、実取引の証憑(請求書・入金記録・買取明細書)さえ揃っていれば税務調査でも問題になりません。
買取業者に売却した場合の処理
法人がBtoB買取サービスに在庫を一括売却した場合、特別な処理は必要ありません。通常の販売取引と同じ要領で記帳します。買取業者から発行される買取明細書には、品目・数量・単価・金額が明記されているため、これを保管しておけば証憑として十分です。
個人事業主の場合も基本構造は同じですが、青色申告での記帳ルールに従って処理します。期中に仕入れた商品をそのまま売却するなら、貸方は「仕入」を直接減らす形でも構いません。前期から繰り越した在庫を売却する場合は、貸方を「商品」(棚卸資産)として処理します。
「低額譲渡」と判定されないための注意点
ここが盲点です。法人税基本通達では、通常販売価格のおおむね70%未満で譲渡した場合、低額譲渡として寄附金扱いにされる可能性があります。これは特に、関係会社や役員、従業員に在庫を「処分価格」で売却するケースで問題になります。
買取業者など、独立した第三者との通常の取引であれば、市場価格を反映した価格として認められるため、まず問題は起きません。しかし、「身内に流す」スキームを取ると、想定外の課税が発生するので注意してください。
実務上の判断軸はシンプルです。
- 独立第三者である買取業者に売却 → 低額譲渡リスクなし
- 関係会社・役員・従業員への安値売却 → 低額譲渡リスクあり
身内に処分させるくらいなら、最初からBtoB買取業者に出した方が、税務リスクと処分スピードの両面で合理的です。
「評価損」が損金算入できる限定された場面
「売却も廃棄もせず、ただ帳簿だけ動かしたい」というニーズがあるのは事実です。しかし、税務上はこれが最も認められにくい処理になります。
法人税基本通達が定める要件
国税庁の法人税基本通達 第2款 棚卸資産の評価損では、評価損が損金算入できるのは次のような特別な事実が生じた場合に限定されています。
- 災害により著しく損傷した
- 著しく陳腐化した
- 破損、型崩れ、棚ざらし、品質変化が生じ通常の方法で販売できなくなった
- 上記に準ずる特別な事実が生じた
しかも、損金経理(実際に帳簿で費用処理する)と、当該資産の帳簿価額を実際に減額することが必須要件です。「実態に合わせて帳簿だけ修正します」という処理は通用しません。
著しい陳腐化と物理的損傷の具体例
「著しく陳腐化した」とは、具体的にどういう状態を指すのか。実務で論点になりやすいので整理します。
- 季節商品が売れ残り、今後も通常価格では販売できないことが過去の実績から明らか
- 同じ用途の商品で、型式・性能・品質が著しく異なる新製品が発売され、旧型を通常販売できなくなった
- 法令や規制改正により、現行品が販売できなくなった
家電やスマホ、ゲーム機などの世代交代が激しい商材で、新型発売により旧型が事実上売れなくなったケースは、ここに該当する可能性が高い。一方、「単に値下がりしている」「過剰生産で投げ売り状態」というだけでは認められません。
物理的損傷についても、「外装に多少の傷がある」程度では足りません。商品としての通常販売が困難になるレベルの損傷であることを、客観的に説明できる必要があります。
「単なる値下がり」が認められない理由
法人税基本通達は、次のような事情による評価損計上を明確に否定しています。
- 物価の変動による値下がり
- 過剰生産による値崩れ
- 建値(取引基準価格)の変更
理由は単純で、これらを認めると、企業が恣意的に評価損を出して節税し放題になるからです。会計上の「保守主義の原則」と、税務上の「課税の公平性」では立場が違うわけです。
低価法を選択している場合の例外処理
ただし、「低価法」という評価方法を選択している事業者は、原価と時価の低い方で在庫を評価できるため、時価が下がった分を機械的に評価損として計上できます。これが評価損ルールの最大の例外です。
低価法を選択するには、税務署への届出書の提出が必要です。法人の場合の手続きは国税庁のC1-25 棚卸資産の評価方法の届出、個人事業主の場合はA1-18 所得税の棚卸資産の評価方法の届出手続で確認できます。
低価法を選ぶ際の主なポイントは次のとおりです。
- 個人事業主は青色申告者でないと選択できない
- 届出時期は法人と個人で異なる(法人は変更予定事業年度開始日の前日まで、個人は確定申告期限まで)
- 一度選択すると原則3年間は変更できない
- 法人税申告では洗替え法(翌期首に元の取得原価に戻す処理)が義務
「来期は儲かりそうだから低価法に切り替えて評価損を出そう」というその場限りの節税は、3年縛りがあるため使えません。中長期での在庫戦略の中で導入すべき仕組みです。
「廃棄損」を計上するときに必須となる証拠書類
「もう売れる気がしない」「保管コストの方が高い」という在庫を物理的に廃棄するケースもあるでしょう。廃棄損は経費化できますが、証拠の壁が予想以上に高いのが実情です。
税務調査で確実に確認される5つの資料
私が事業再生の現場で何度も見てきた、廃棄損計上時に必須となる証拠資料は次の5点です。
- 廃棄資産の明細表(品目・数量・帳簿価額を記載)
- 廃棄前および廃棄時の写真(日付入りが望ましい)
- 廃棄業者の請求書・領収書・廃棄証明書
- 社内稟議書または廃棄決定の経緯がわかる書類
- 在庫管理台帳との数量整合性が取れる資料
これらが一式揃っていなければ、税務調査で「本当に廃棄したのか確認できない」として、廃棄損が否認されるリスクが現実的に存在します。書類の保管期間は原則として法人で7年(赤字繰越の関係で最大10年)、個人事業主で原則7年です。
期末日前の廃棄実行が大原則
意外と見落とされるのが、廃棄のタイミングです。決算日(事業年度末日)までに実際に廃棄が完了していなければ、その期の損金にはなりません。「廃棄を決定したのが3月、実際に業者が引き取ったのが4月」というケースでは、3月末決算の会社の場合、損金算入は翌期に持ち越しになります。
実務でよくあるのは、「3月末に廃棄を発注したが、業者の引取りスケジュールが詰まっており、実廃棄は4月にずれた」というパターン。これで税務調査で否認された事例は枚挙にいとまがありません。
「カラ廃棄」が最も危険な否認パターン
税務調査で最も厳しく見られるのが、いわゆる「カラ廃棄」です。
帳簿上は廃棄処理しておきながら、実際にはその商品をフリマアプリやリサイクル店で換金している。あるいは、関係会社にひそかに横流ししている。こうしたケースは、帳簿の動きと現物の動きが一致しないため、調査官は写真や廃棄業者からの証憑を細かく突き合わせて確認します。
「カラ廃棄」と認定されると、廃棄損の否認だけでは済みません。重加算税の対象となり、追徴税額が大幅に膨らむうえ、税務署の調査対象として継続的にマークされます。経営にとっては最大級のリスクです。
廃棄損の証拠固めに自信がないなら、最初から「廃棄ではなく専門業者への売却」を選んだ方がはるかに安全です。実取引が発生していれば、売却損は自然に経費化されますし、現金も入ってくる。帳簿上の損失額は廃棄損と同等以下になるかもしれませんが、税務リスクと現金回収を加味すれば、トータルでは買取の方が経済合理性が高いケースが多い。
法人・個人事業主の仕訳例
ここで、実務で頻出するパターンの仕訳をまとめておきます。仕訳は会計ソフトの設定や事業者の方針で多少差があるため、最終的には顧問税理士に確認してください。
買取業者に売却した場合の仕訳
帳簿価額300,000円の商品を、買取業者に100,000円で売却したケース。
(法人・個人事業主共通/売却計上)
現金預金 100,000 / 売上 100,000
(売上原価の計上)
仕入(売上原価)300,000 / 商品(棚卸資産) 300,000
結果として、売上100,000円・売上原価300,000円となり、売上総利益は△200,000円。この200,000円が実質的な売却損として課税所得を圧縮します。
廃棄処分した場合の仕訳
帳簿価額300,000円の商品を産業廃棄物として廃棄し、廃棄業者に手数料20,000円を支払ったケース。
商品廃棄損 300,000 / 商品(棚卸資産) 300,000
支払手数料 20,000 / 現金預金 20,000
商品廃棄損は損益計算書上、特別損失または営業外費用として計上することが多い項目です。金融機関の融資審査で営業利益を重視されるケースを想定するなら、特別損失計上の方が経営実態を正しく見せられます。
評価損を計上する場合の仕訳(低価法・洗替え法)
低価法を選択しており、取得原価1,000,000円の商品の期末時価が600,000円に下落しているケース。
(期末/評価損計上)
商品評価損 400,000 / 商品(棚卸資産) 400,000
(翌期首/戻入処理)
商品(棚卸資産)400,000 / 棚卸資産評価損戻入益 400,000
法人税申告では洗替え法が原則となるため、翌期首に必ず戻し入れ処理を行います。切放し法(戻し入れしない方法)を選択できるのは会計上の話で、税務調整で洗替え法に揃える必要があります。
個人事業主の青色申告での処理
個人事業主の場合、勘定科目の名称が法人と若干異なります。青色申告決算書の「製造原価の計算」または「損益計算書」に直接反映させる科目を使います。
- 「売上原価」または「期末商品棚卸高」の調整で対応
- 廃棄損は「雑損失」または事業所得の必要経費として計上
- 低価法を選択する場合は青色申告必須
会計ソフト(freee、マネーフォワード、弥生など)を使っていれば、適切な勘定科目が自動でセットされるため、入力ミスは起きにくくなっています。それでも、年に一度の決算処理時には、棚卸資産の動きを必ず人間の目で確認してください。
インボイス制度が在庫の売却に与える影響(2026年最新版)
2023年10月にスタートしたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、在庫の売却にも影響を及ぼしています。2026年4月時点での最新の論点を整理します。
売却する側が押さえるべき論点
在庫を買取業者に売却する事業者として、まず確認すべきは自社の登録ステータスです。
- 適格請求書発行事業者として登録済みなら、買取業者へ通常通り適格請求書を発行する
- 免税事業者のままなら、適格請求書は発行できない(買取業者側は経過措置の範囲でしか控除できない)
買取金額が大きい取引では、買取業者側から「インボイス番号は?」と確認されるのが一般的です。インボイス未登録の事業者は、買取業者から取引価格の引き下げを打診されるケースもあるため、年間の売却見込み額と消費税負担を天秤にかけて、登録の要否を判断するのが実務です。
なお、登録要否や取引条件の判断は事業者の状況によって変わるため、最終判断は顧問税理士と相談してください。詳しい仕入税額控除の保存要件は国税庁のNo.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存で確認できます。
買取業者側の経過措置(80%→50%控除)
買取業者側の論点として、免税事業者からの仕入に対する経過措置があります。期間と控除割合は次のとおりです。
| 期間 | 控除割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日〜2026年9月30日 | 仕入税額相当額の80% |
| 2026年10月1日〜2029年9月30日 | 仕入税額相当額の50% |
| 2029年10月1日以降 | 控除不可 |
2026年4月現在は80%控除期間の終盤に差し掛かっています。半年後の2026年10月から控除割合が50%に下がるため、買取業者側のコスト負担が増加し、免税事業者からの仕入価格に下方圧力がかかる可能性が高い。インボイス未登録の事業者は、夏までに登録の検討を済ませておくと、価格交渉の局面で不利を被りにくくなります。
古物商特例で帳簿保存のみで控除できるケース
例外として、古物商許可を持つ買取業者が、適格請求書発行事業者でない者(一般消費者・免税事業者)から「棚卸資産となる古物」を仕入れる場合、適格請求書なしで帳簿保存のみで仕入税額控除が認められます。これが「古物商等特例」です。
中古品買取に強い業者の多くはこの特例を使えるため、せどり業者が個人として在庫処分する場合、買取業者側は通常通り仕入税額控除を行えます。つまり、せどり業者がインボイス未登録でも、古物商相手の取引では買取価格が直撃して下がるリスクは比較的小さい、ということです。
ただし、「新品未開封品」を扱う買取業者など、古物商の枠を超えた取引形態では、この特例が使えないケースもあります。自分が売却する商品が、相手側にとって古物商特例の対象になるかは事前に確認してください。
なぜ「廃棄」より「買取」のほうが税務上有利になるのか
ここまで読んでいただいた方には、ほぼ伝わっているはずです。在庫の処分手段として、税務リスクと現金回収の両面で見たとき、「買取」が「廃棄」を上回るケースが圧倒的に多い。
証拠資料の負担が大幅に軽減される
廃棄損で必要な5つの証拠資料、写真、稟議書、廃棄証明書。これらをすべて整え、保管し、税務調査に備える手間は決して小さくありません。一方、買取業者への売却なら、買取明細書と入金記録という通常の取引書類だけで証憑として完結します。
キャッシュフロー改善との両立
廃棄は損失を確定させるだけですが、買取は「損失計上+現金化」を同時に実現します。仮に帳簿価額300,000円の在庫を100,000円で売却すれば、200,000円の経費計上と100,000円の現金流入が一度に得られる。決算前の3月、9月、12月など、節税と資金繰りの両方が問題になるタイミングで、最も効果的な打ち手になります。
実務上の判断基準
廃棄を選ぶべきか、買取を選ぶべきか。判断基準は明快です。
- 買取業者から1円でも値が付くなら、まず買取を打診
- 完全にゼロ査定(買取不可)の場合に限り、廃棄損での処理を検討
- 廃棄を選んだ場合は、証拠書類の整備に万全を期す
- 大量在庫や特殊商材は、複数の買取業者から相見積もりを取る
経営における時間とリソースは有限です。廃棄損の証拠固めに人手を割くより、買取で現金化した方が、企業全体としての労働生産性は確実に上がります。「キャッシュ・イズ・キング」という言葉が腑に落ちるはずです。
まとめ
在庫処分の税務処理を整理すると、押さえるべき要点は次のとおりです。
- 在庫処分の処理は「売却損・評価損・廃棄損」の3種類があり、それぞれ税務上の扱いが異なる
- 売却損は通常取引の延長で自然に経費化される、最も税務リスクが低い処理
- 評価損は法人税基本通達の限定要件を満たす場合のみ損金算入できる
- 廃棄損は実廃棄の証拠資料が揃って初めて認められる、証拠固めが必須
- カラ廃棄は重加算税の対象となる重大な否認リスク
- 法人と個人事業主では届出時期や仕訳科目が一部異なる
- 低価法を選ぶなら3年縛りがあるため中長期戦略の中で判断する
- インボイス制度の経過措置は2026年10月から控除率が80%→50%に縮小
- 古物商等特例があるため、中古品買取では買取業者側の負担増は限定的
- 税務リスクとキャッシュフローの両面から、廃棄より買取が合理的なケースが多い
経営者にとって、在庫は資産でも負債でもあります。決算書に並ぶ「棚卸資産」の数字が、本当に未来のキャッシュを生むものなのか、それとも資金繰りを蝕む時限爆弾なのか。その目利きこそが、プロの事業者の腕の見せ所です。
決算前の3ヶ月、半年で動かない在庫をリストアップし、買取業者への一括査定を打診する。動くものは現金化し、ゼロ査定のものだけ廃棄証拠を整えて損金処理する。この手順を毎期ルーティン化するだけで、税務リスクとキャッシュフロー、両方の悩みが大きく軽減されます。
なお、税務処理の最終判断は事業者ごとに事情が異なります。個別具体的な事案については、必ず顧問税理士の確認を受けてください。本記事は、税理士との相談を前提とした実務の基礎知識を提供するものです。
その在庫、1ヶ月後にはいくらのキャッシュになっていますか。答えられないなら、そろそろ動くときです。